コーティングにキズ防止効果はありません。
「防キズ」「抗ウイルス・抗菌」と表示していたにもかかわらず、表示の裏づけとなる合理的な根拠を示すものと認められなかったのです。
この処分は、スマートフォンだけでなく、自動車のコーティングにも当てはまる重要な事実を示しています。
本記事では、専門家である筆者が、なぜコーティングにキズ防止効果がないのかと、正しいキズ対策の選び方について、あなたの疑問に明確にお答えします。
- コーティングにキズ防止効果がない理由(厚みの違い)
- 消費者庁処分が示す「防キズ」表示の真実
- コーティングとPPFの厚み比較(数ミクロン vs 約150μm)
- コーティングの本当の役割(防汚・艶維持)
- 正しいキズ対策の選び方(PPFとの違い)
コーティングにキズ防止効果はない|理由は「厚み」の違い
世の中には、平気で事実誤認させるようなホームページや広告が散乱しています。本当に気を付けてください。

このような、キズが付かないというような内容をうたっているホームページのほぼすべてが虚偽だと思ってください。その理由はこの記事でしっかり説明をします。とにかく、コーティングの被膜ではキズ防止効果は期待できないのです。
コーティングにキズ防止効果がない理由は、被膜の厚みが足りないからです。
細かな摩耗を多少は軽減しうる可能性はありますが、その効果をいかにも「キズがつきません」という表記にするのは大いな誤解を与えます。一般的な目に見えるキズを防止抑止する効果は、残念ながらコーティング被膜では達成できません。
なぜコーティングではキズが防げないんですか?
理由は「厚み」です。コーティングの被膜は数ミクロンと非常に薄く、物理的な衝撃を吸収できません。キズを防ぐには、厚みのあるフィルムが必要です。
コーティングの被膜の厚みは、一般的に以下の通りです。
- ガラスコーティング:0.3〜1 μm(マイクロメートル)程度
- セラミックコーティング:1〜10 μm程度
一方、PPF(プロテクションフィルム)の厚みは、約150μm(0.15mm)です。
つまり、PPFはコーティングの約150倍〜500倍の厚みがあります。
車の塗装に付く傷の深さは、洗車キズで平均5〜20μm、飛び石傷で平均30〜100μm程度と言われています。
コーティングの被膜(数ミクロン)では、このような傷の深さをカバーできません。一方、PPFの厚み(約150μm)なら、ほとんどの傷から塗装を守ることができます。
つまり、キズを防止したいならフィルム(PPF)が必要です。
| 施工内容 | 被膜・フィルムの厚み | キズ耐性 | 防汚効果 | 光沢維持 | 主な役割 | 向いている人 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| コーティング | 0.3〜10 μm(数ミクロン) | 弱い | 高い | 高い | 防汚・光沢維持 | 艶と洗車性を重視 |
| PPF(保護フィルム) | 約150 μm(0.15mm) | 強い | 普通 | 普通 | 物理的保護 | キズ防止を重視 |
| 未施工 | – | なし | なし | なし | 保護なし | – |
傷の深さの目安:洗車キズ(5〜20μm)、飛び石傷(30〜100μm)
つまり、目に見えるキズ防止を目的にするなら、コーティングでは役不足です。確実にフィルムの検討をされるべきです。
スタートラストからのアドバイス
なぜ「防キズ」と誤解されるのか|広告と表現の問題
誤解の原因は、広告表現の印象操作です。 数字や言葉が、実力以上に強く見せています。
「硬度9H」って表示を見たけど、これってキズに強いってことじゃないの?
「硬度9H」は鉛筆の硬度試験の結果です。実際の車のキズ(砂埃、洗車時の摩擦)とは全く別物。硬い=守れるではありません。
多くの広告で「硬度9H」という表現が使われています。これは鉛筆硬度試験で、コーティング剤の表面がどれだけ硬いかを示す数値です。
しかし、ここで重要なのは、硬度には2つの尺度があるということです。
- 鉛筆硬度(JIS K 5600-5-4):鉛筆の芯(6B〜9H)で表面を引っかいて測定。コーティングの「9H」はこの尺度。
- モース硬度:鉱物の硬さを1〜10で表す尺度。石英は7、ダイヤモンドは10。
問題は、鉛筆硬度とモース硬度は全く別の尺度だということです。
コーティングの「9H」は鉛筆硬度の話であり、実際の車のキズ(砂埃の主成分である石英はモース硬度7)とは比較できません。
さらに、この数値は実際の車の使用環境とは全く異なる条件で測定されています。
- 「硬度9H」=キズに強いと誤解されやすい(実際は鉛筆硬度試験、モース硬度とは別物)
- 試験条件が実使用と違う(静的な圧力 vs 動的な摩擦)
- スマホと車の用途が混同される(スマホは軽い接触、車は重い衝撃)
一言で言うと、硬い=守れるではありません。さらに、鉛筆硬度とモース硬度は別物なので、比較すること自体が誤解を招きます。
スタートラストからのアドバイス
「硬度9H」という表示を見ると、つい「キズに強い」と思ってしまいますが、これは鉛筆硬度の話です。実際の車のキズ(砂埃の主成分である石英はモース硬度7)とは全く別の尺度なので、比較できません。説明不足の商品ほど誤解が多いです。当店では、コーティングの効果と限界、そして硬度の尺度の違いを最初にしっかり説明します。「防キズ」を期待されるお客様には、PPF(プロテクションフィルム)を提案することが多いです。
コーティングの本当の役割|防汚・艶維持が本質
コーティングの役割は美観維持です。 つまり、キズ防止ではありません。
じゃあ、コーティングって何のためにするんですか?
コーティングの本当の役割は、汚れを付きにくくし、清掃や洗車を楽にすることです。光沢を長く保つ効果もあります。キズ防止ではありません。
コーティングは、スマホや車の被膜(コーティング剤が固まった薄い層)によって、汚れが付きにくくなります。
具体的には、以下の効果があります。
- 手あかや汚れが付きにくくなる:撥水・親水効果により、泥や水アカが付きにくい
- 洗車が楽になる:汚れが落ちやすく、洗車時間が約半分になる
- 光沢を長く保てる:紫外線や酸化から塗装を保護し、艶を維持
なので、美しさ重視なら有効です。
スタートラストからのアドバイス
艶の満足度は確実に上がります。名古屋は湿度が高く、また工業地帯に近いため、汚れが付きやすい環境です。コーティングを施工することで、洗車頻度を減らし、常に美しい状態を保ちやすくなります。
コーティング施工車でもキズは入る|専門店の実体験が示す事実
コーティングを施工した車でも、キズは必ず入ります。 これは専門店の施工実績から明らかです。
コーティングを施工すれば、キズが入らなくなるんじゃないですか?
残念ながら、コーティングを施工してもキズは入ります。当店で施工した何百台もの車両を見てきましたが、コーティング施工後も洗車キズや花粉摩擦による線傷は必ず入ります。
当店では、コーティング施工後のお客様の車両を定期的に確認しています。

その結果、以下のことが分かりました。
- 洗車時の摩擦は避けられない(マイクロファイバークロスでも摩擦は発生)
- 砂埃は塗装より硬い(石英はモース硬度7、塗装の表面硬度は鉛筆硬度で2H〜4H程度)
- 被膜は衝撃を吸収できない(数ミクロンの厚みでは物理的保護は不可能)
つまり、日常使用でキズは避けられません。
スタートラストからのアドバイス
名古屋は砂が多くキズが入りやすいです。当店で施工した高級車でも、洗車キズや花粉摩擦による線傷は必ず入ります。コーティングを施工しても、キズが入らないわけではありません。施工現場で何百台も見てきましたが、この事実は変わりません。
期待と結果がズレる理由|コーティングの限界
後悔の原因は期待値の高さです。 万能だと思うと失敗します。
コーティングをしたのに、思ったよりキズが付いてしまいました…
それは「防キズ」を期待されていたからです。コーティングはキズ防止ではなく、汚れ防止およびツヤの維持が目的です。効果を正しく理解すれば、満足度は上がります。
「防キズ」を信じて高額施工を選ぶと、期待と結果の不一致が起こります。
- 広告と実性能の差(「防キズ」と表示されていても実際は防げない)
- 再施工コストの負担(期待外れで再施工を検討する場合)
- メンテナンスの手間(キズが入った時の対処が必要)
一言で言うと、理解不足が不満を生みます。
スタートラストからのアドバイス
説明を省く店は要注意です。当店では、「防キズ」を期待されるお客様には、必ずコーティングの限界を説明し、PPFを提案します。効果を正しく理解していただくことで、満足度を高めています。
正しいキズ対策とは|物理的に守る唯一の方法
キズ対策は物理保護しかありません。 つまり、フィルムです。
じゃあ、キズを防ぐにはどうすればいいんですか?
物理的な保護が必要です。PPF(プロテクションフィルム)を施工することで、飛び石や洗車キズから塗装を守れます。コーティングでは不可能です。
PPF(プロテクションフィルム)は、厚み約150μmのフィルムを車体に貼ることで、物理的な衝撃から塗装を守ります。

- 塗装より厚い層で守る(約150μm vs 塗装の数ミクロン)
- 衝撃を吸収できる(自己修復性機能で軽微な線キズを回復)
- 実証データがある(飛び石傷をほぼ防止)
なので、本気ならPPFが必要です。
スタートラストからのアドバイス
XPELは高級車比率が高いです。当店では、XPEL認定インストーラーとして、高級車のお客様にPPFを提案することが多いです。特にフロントやドアに施工することで、飛び石傷や洗車キズから確実に保護できます。
コーティングとPPFの違い|目的別比較
目的が違えば選択も変わります。 つまり、併用も選択肢です。
コーティングとPPF、どっちを選べばいいですか?
キズ防止を重視するならPPF、艶と防汚を重視するならコーティングです。両方の効果を求めるなら、PPF+コーティングの併用も可能です。
PPF(プロテクションフィルム)は、厚み約150μmのフィルムを車体に貼ることで、物理的な衝撃から塗装を守ります。
一方、コーティングは数ミクロンの薄い被膜で、汚れを付きにくくし、光沢を維持します。
| 項目 | コーティング | PPF(プロテクションフィルム) |
|---|---|---|
| キズ防止 | 不可 | 可能(物理的保護) |
| 防汚効果 | 高い | 普通 |
| 光沢 | 高い | 普通 |
| 被膜・フィルムの厚み | 数ミクロン(非常に薄い) | 約150μm(厚い) |
| 施工箇所 | 全車体 | フロント、ドア、ボンネットなど |
| 価格相場 | 比較的安価(5〜15万円) | 高価(20〜50万円以上) |
| 耐久性 | 2〜5年 | 5〜10年 |
| 向いている人 | 艶と洗車性を重視 | キズ防止を重視 |
一言で言うと、目的で選ぶべきです。
スタートラストからのアドバイス
最近は併用が増えています。フロントやドアにPPFを施工し、全車体にコーティングを施すことで、キズ防止と美観維持の両方を実現できます。特に高級車のお客様に人気の施工方法です。
向いている人・向かない人|コーティングを選ぶ基準
全員に向く施工ではありません。 目的と環境によって、向き不向きがあります。
コーティングが向いている人
- 艶と洗車性を重視する人
- 洗車頻度を減らしたい人
- 光沢を長く保ちたい人
- 防汚効果を期待する人
- 比較的安価な施工を希望する人
コーティングが向かない人
- キズ防止を期待する人(PPFを推奨)
- 飛び石が多い環境で走る人(PPFを推奨)
- 物理的な保護を最優先する人(PPFを推奨)
つまり、目的次第で評価が変わります。
スタートラストからのアドバイス
用途確認が最重要です。当店では、お客様の使用環境や目的を詳しくヒアリングしてから、最適な施工方法を提案します。「防キズ」を期待される場合は、必ずPPFを提案します。
信頼できる専門店の見極め方|表示の裏を読む
説明できる店が信頼できます。 つまり、「できない」と言える店を選ぶべきです。
どうやって信頼できる専門店を見分ければいいですか?
「防キズ」を断言しない店、デメリットも説明する店、代替案を提示する店が信頼できます。説明時間が長い店ほど、お客様の目的を理解して提案してくれます。
信頼できる専門店の特徴は、以下の通りです。
- 防キズを断言しない:コーティングの限界を正直に説明する
- デメリットも説明する:メリットだけでなく、デメリットも伝える
- 代替案を出す:目的に応じてPPFなど他の選択肢を提案する
一言で言うと、正直な店が信頼できます。
スタートラストからのアドバイス
説明時間が長い店ほど安心です。当店では、お客様の使用環境や目的を詳しくヒアリングし、コーティングの効果と限界を正直に説明します。「防キズ」を期待される場合は、必ずPPFを提案します。説明を省く店は要注意です。
専門店視点の結論|防キズ神話から抜け出す
コーティングは万能ではありません。 つまり、美観用と割り切るべきです。
記事の核心をまとめると、
- コーティングに「防キズ」効果はない(消費者庁も認定)
- コーティングの本当の役割は防汚・艶維持
- キズ防止を求めるならPPF(プロテクションフィルム)が唯一の選択肢
- 目的に応じて選ぶことが重要
にあります。
しかし、正しい理解と目的に応じた選択が、結果的に最もお得で安心な選択となります。
専門店では、これらの特徴を最大限に生かしつつ、さらにユーザーの悩みである「効果の持続期間最大化」や「対策効果」を重視したメニューの提供をするために日々メーカーと情報共有しながら材料改善をし続けています。
プロの下地処理と施工技術により、コーティング本来の効果を最大限に引き出すことができます。選びで迷われている方は、ぜひ専門店にご相談ください。
コーティングの基礎知識については、ガラスコーティングとは?専門店が徹底解説【完全ガイド】で詳しく解説しています。
コーティングの詳細や料金については、コーティングサービスページをご覧ください。
目的を決めて選べば後悔しません。 専門店視点:正しい理解が満足度を高めます。

